藤枝工場に低・中分子医薬品の製造棟を新設 FJ2を産み出した一人ひとりの想いと使命感

  • 専門性をもって、新しい世界にチャレンジできる場所
  • 自分にとってのイノベーション、それを追求できる空間がここにある

製薬の新しい「未来」を築くのは、つながる人のチカラ

藤枝工場に新設された低・中分子医薬品の合成原薬製造棟FJ2。その建設は中外製薬工業にとって初めての挑戦であり、次の成長への布石でもあります。このプロジェクトで、さまざまな役割を果たしたメンバーの声を集めました。

世界が認めた低・中分子原薬製造設備 ここには理想を受け、根本から考えるおもしろさがある

根本的な概念設計の段階から参加でき、
やりがいを感じました。
研究開発型企業のエンジニアリングを
担うことは、非常に刺激的です。
さまざまな部署、外部企業もまきこみ、
これからも我々の理想を実現していきたいですね。

プロジェクト全体のマネジメント DE(デジタルエンジニアリング)部 2001年入社
  • プロジェクト全体のマネジメント

DE(デジタルエンジニアリング)部
2001年入社

中外製薬工業は中外製薬グループの中で主に生産機能を担っている企業です。中でも初期段階では、研究開発から製造へとつなぐ技術移転を行いますが、これは非常に難易度が高く、私はここにやりがいを感じています。

今回のFJ2の建設プロジェクトでは、まず中外製薬の研究開発部門から、低・中分子医薬品製造のためにこうした設備がほしい、という定性的な理想像が示されました。
私を含むプロジェクトメンバーはその理想像の実現に向けて、具体的にどのような規模の設備、機器が必要となるか、研究、エンジニアリング、製造、生産技術の観点から最適解を導き出すべく活動しました。
私はエンジニアリング部門を代表してプロジェクトをマネジメントする立場で携わりました。初期段階の概念設計からプロジェクトに参加できたため、FJ2が竣工した現在では、これまでにはない達成感を感じています。これは、エンジニアとしての醍醐味でもあります。

中分子医薬品を病気で困っている患者様のもとへ届けるというチャレンジは、これまで中外製薬が積み上げてきた抗体医薬品(高分子)と低分子医薬品の両方の知見及び経験、ノウハウを活かし、この両方の強みを発揮して高付加価値な医薬品を提供していくという点において大きな意義があります。
FJ2だけでなく、研究開発型企業の一員として課題に取り組むことはチャレンジングかつ非常に刺激的です。今後も「すべての革新は患者さんのために」という私たちの理想を実現に向けて、取り組んでいきたいと考えています。

FJ2プロジェクト

新しいモダリティ「中分子医薬品」

中分子医薬品は、低分子と抗体(高分子)の間に位置づけられる化合物で、特性が高く、細胞内のターゲットにも結合でき、経口投与が可能といった特徴があり、低分子と抗体医薬のメリットをあわせ持つ次世代の医薬品として期待されています。
これまで狙うことが困難だった標的を狙いやすく、また、経口剤にも注射剤にもなる利点が期待される医薬品であり、中外製薬では10年以上前から経営資源を投下し、競争優位性を有する独自の中分子技術を確立しています。

GMP製造を保証する 多くの人の協力のもと、クオリフィケーションのノウハウを磨く

異なる部署や企業の理解を仰いで
進めなければならない業務が多く、
コミュニケーション力の重要性も強く
感じました。

プロジェクト全体のマネジメント クオリフィケーション担当 藤枝工場 製造10グループ 2006年入社
  • プロジェクト全体のマネジメント
  • クオリフィケーション担当

藤枝工場/製造10グループ
2006年入社

医薬品製造においては製造設備やシステムが正しく設置され、稼働し、期待される結果を出せることを検証し、文書化することが必要。それをクオリフィケーションと呼び、GMPを遵守した製造を保証することにつながります。
現在はあらゆる業務のデジタル化の進展に伴い、自動システムによる効率化が図られていますが、同時に改ざん防止の対応により電子記録の保証も必要です。

私はFJ2の建設プロジェクト全体のマネジメントに加え、こうしたクオリフィケーションの仕事を担当しました。
どういうエビデンスを集めるべきか、検査の深さ、範囲はどこまで行えばよいのか、と悩むことは多かったですね。
GMPの高い要求レベルを満たさなければなりませんが、反面、厳密さを追求すれば、コストも時間もキリがないので、いかに社内外の人々が納得できる良いバランスで、きちんと検査を行い、エビデンスを集めるかに知恵を絞りました。
また、エンジニアリング会社などにもクオリフィケーションの重要性や細かい部分を伝えることが必要です。

このように製造関連のプロジェクトでは、異なる部署や企業の理解、協力をいただいて進めなければならない業務が多く、コミュニケーション力の重要性も強く感じました。

クオリフィケーション

製造における適格性を証明するクオリフィケーション

適格性評価と訳され、機器やシステムが正しく配置され、正確に動作し、期待された結果が出ることを検証し、それらを文書化する作業です。これは「あらかじめ決められた規格と品質に合致する製品が恒常的に製造されることを高度に保障し、そのことを文書化する」というバリデーションの一環で、医薬品製造では欠かせない業務となっています。

遵守必須の製造・品質の基準GMP(Good Manufacturing Practice

医薬品の製造管理および品質管理に関する基準をまとめたもの。「人為的な誤りを最小限にする」「医薬品の汚染および品質低下を防止する」「高い品質を保証するシステムを設計する」というGMP三原則を土台としています。日本では厚生労働省が公布するGMP省令として示され、これが医薬品と医薬部外品の製造販売承認するときの要件になっています。
またGMP省令は必要に応じた改正も行われるため、医薬品製造に携わる企業は常に省令に合わせて手順書などを改定する必要があります。

世界最高レベルの封じ込めを実現 さまざまな企業と議論を重ね、最新の封じ込め技術などを採用

専門性を活かし、新しい分野にチャレンジできることが大きな魅力。
ロシュ社の協力を得て最新の技術、
情報を得られることも刺激的です。

プロセス分科会リーダー担当 DE(デジタルエンジニアリング)部 2015年入社
  • プロセス分科会リーダー担当

DE(デジタルエンジニアリング)部
2015年入社

FJ2の建設は、中分子医薬品という新分野の開発製造に向けた布石。専門領域ごとに分科会を作り、その上に全体をまとめるマネジメントオフィスを置く体制で進められました。

私はプロセス分科会のリーダーとして、研究や製造の部門の要望を聞き、エンジニアリング企業とやりとりしながら、生産関連設備の選択、設置に携わりました。

FJ2では中外製薬工業(以下当社)にとっても初の試みが多いので、やりたいことを外部企業にいかに的確に伝えるかがむずかしいところでした。
活発な議論の中から、極めて高度な封じ込め性能を持つ特殊なアイソレータ、高い洗浄機能を有して多品目製造に対応できる反応装置などの採用が決まり、FJ2の大きな特徴となっています。

当社での業務は専門性を活かし、新しい分野にチャレンジできることが大きな魅力。
ロシュ社の協力を得て最新の技術、情報を得られることも刺激的です。この経験を今後の新しいプロジェクトにも活かしたいですね。

最新の封じ込め技術(移動式アイソレータ)

最新の封じ込め技術(移動式アイソレータ)

原料などを扱う作業空間を周囲から物理的に隔離すること。封じ込めは、高薬理活性原薬など危険がある物質から作業者を守り、また他の物質との交叉汚染などを避けるために必要です。封じ込める技術にはさまざまあり、アイソレータもその一つ。FJ2が採用した移動式アイソレータ*は、天井に設置された周回状のレールに沿って移動*でき、任意の反応釡に接続*できる仕組みになっています。

*FJ2の目標を達成するために開発された技術です(協力会社の知的財産が含まれます)。

最新ノウハウを導入、洗浄しやすい設備に 洗浄性能の向上は治験薬製造におけるメリット

治験薬製造は常に新しいものをより早く製造する必要があるので競争が激しく、スピードが重要。
洗浄機能の向上による洗浄期間短縮の
重要性は高く、
稼働期間を長く取れるようになることは武器になる。

溶媒を用いた設備の試運転、データの確認担当 甲種危険物取扱者 藤枝工場 製造10グループ 2011年入社
  • プロセス分科会メンバー
  • 製造工程責任者

藤枝工場/製造10グループ
2011年入社

私は基本設計の段階からFJ2建築プロジェクトに参画し、製造設備の設計に携わりました。FJ2の先進性は、世界最高レベルの封じ込め性能、洗浄機能の高い設備、MES(製造実行システム)による管理など多々あります。
その中で特に私が力を入れたのは、従来の治験原薬製造設備で課題となっていた「洗浄期間の短縮」です。
ロシュ社のメンバーと議論し、配管の接続部分をフランジでなく溶接にする、デッドスペースの少ないバルブの導入など、化合物が「残留しにくい」「洗いやすい」ノウハウを駆使して作業を効率化。従来だと数カ月かかっていた設備洗浄期間を短縮しました。

新薬開発の一端を担う治験薬製造は常に新しいものをより早く製造する必要があるので、競争が激しくスピードが重要です。
このため、洗浄機能の向上による洗浄期間短縮の重要性は高く、次製品の製造開始時期を早めることにつながります。FJ2で実現した洗浄性の向上は設備稼働期間を長く取れるようになるというメリットを生み出し新薬開発にとって武器になっています。

設備の試運転、データの確認

治験薬製造の効率化に欠かせない高い洗浄機能

洗浄技術はあらゆる製造設備で必要とされる技術です。特に医薬品分野の場合、製品の品質を確保するためには、製品以外の物質を混入させないことが必須であり、そのために高い洗浄機能は欠かせません。
また、前製品の洗浄が完了しない限り、次製品の製造を開始することができないため、洗浄期間の短縮は新薬の開発スケジュールに影響します。
洗浄技術は洗浄対象とする化合物の特性、設備の構造によっても多種多様です。また、全ての設備を分解して洗浄できるという訳ではありません。FJ2では、化合物が「残留しにくい構造」、残留しても「容易に洗浄できる機構」の設備を導入し、洗浄期間の短縮を実現させました。

開発から製造、運用、保守まで担う 初めて出会った最新設備を知恵と工夫で理解する

故障やトラブルに対応しています。
トラブルなどのとき、
他メンバーと協力して解決できたときは
やはり達成感がありますね。

設備保全 定期点検のとりまとめを担当 藤枝工場 製造10グループ 2020年入社
  • 設備保全担当
  • 定期点検のとりまとめを担当

藤枝工場/製造10グループ
2020年入社

中外製薬工業にとって製造設備の開発や施工はもちろん、完成した設備を問題なく稼働させることも重要な使命です。
私の現在の仕事はその一環である設備保全。具体的には定期点検のとりまとめを担当し、故障やトラブルの対応も行っています。
トラブルなどのとき、他メンバーと協力して解決できたときはやはり達成感がありますね。

私はFJ2の建屋がほぼ完成した段階で、ここに配属となりました。入社2年目だったので不安もありましたが、新しいことにチャレンジできる喜びも大きかったですね。それまで小規模の商用生産を行う部署にいたので、規模もやりかたもがらっと変わりました。以前の部署では最終収量は100g程度でしたが、ここでは多いときは20kgにおよびます。原料の仕込みも以前はガロン瓶からメスシリンダーという実験室のような世界でしたが、今は、タンクからポンプで反応釡に移すという工場ならではの世界になりました。

また新しい大規模施設だけに、最初はどこに何があるのかわからず、迷ってしまうほど。
そこで点検などのときに図面を見ては、何階に何が設置されているのかを確認、また図面にある配管の略号を一覧にしてスマホのケースに入れておき、配管の役割から理解していきました。
今後はさらにオペレーション効率を高め、少人数、短時間製造を実現し、複数品目の同時製造を順調に行える設備にしていきたいと思っています。

点検で図面を見て確認

生産性を具現化する「スケールアップ」

医薬品の原薬などにおいて、実験室で開発された製造方法を、工場でも生産できるように大規模化することを言います。
同じ化学反応を起こすにしても、実験室と工場では、扱う分量、反応時間、装置、作業方法、安全管理、規制など、さまざまな条件が異なるため、同じ方法ではうまくいきません。段階を踏んで検証しながら規模を拡大し、製造プロセスを開発する必要があります。
これには薬理学のほか、物性化学、化学工学、機械工学など、幅広い知見が総動員されます。

ISPE 2023年間優秀施設賞 受賞 世界の製薬技術を推進する業界団体から高い評価を得る

封じ込め技術、環境対応をはじめ
柔軟性の高い製造体制と設備が高い評価を受け、Innovation部門の年間最優秀施設賞を受賞しました。

1980年に米国で設立されたISPE(International Society for Pharmaceutical Engineering/国際製薬技術協会)は世界90カ国から2万人以上のヘルスケア製品の製造に関する関係者が参加する非営利団体です。

この団体が実施している賞FOYA(Facility of the Year Award)において、中外製薬グループの藤枝工場内に新設されたFJ2は、Innovation部門の年間最優秀施設賞を受賞しました。

高薬理活性物質を安全に扱うことのできる封じ込め技術、自然冷媒などによる環境への対応、安全性のほか、協力したエンジニアリング企業も含めたチームワーク、低分子医薬品と中分子医薬品両方の製造プロセスを同施設内に持ち、どちらも製造できる柔軟性などが高い評価を受けました。

2023 年間優秀施設賞 受賞 innovation部門 ISPE Facility of the Year Awards / ISPE:国際製薬技術教会(International Society for Pharmaceutial Engineering) / 藤枝工場 合成原薬製造棟 低・中分子医薬品 / 高薬理活性物質を安全に取り扱う世界最高レベルで革新的な製造施設であることが評価されました。

※紹介内容等は取材時(2023年12月)のものとなります。

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