世界が認めた低・中分子原薬製造拠点を創る 培った叡智を集めて新しいモダリティに挑戦

低・中分子医薬品の合成原薬製造棟「FJ2」

次の時代を見すえて築く、製薬の新しい柱

中外製薬グループは、これまでのノウハウや実績を活かし、新しいモダリティである中分子医薬品開発に進出、開発初期の治験原薬製造を主に担う拠点として、藤枝工場内に低・中分子医薬品の合成原薬製造棟「FJ2」を新設しました。

※: 低分子医薬、中分子医薬、抗体医薬を含む蛋白質医薬、核酸医薬、細胞医薬、再生医療といった治療手段

世界が認めた低・中分子原薬製造設備 数々の専門チームが連携し、未開拓の中分子医薬品に挑む

FJ2には、開発から製造に至る
幅広い技術力、プロジェクト推進力、
チームワークが結実

中分子原薬、低分子合成原薬両方の製造設備
  • 低分子、抗体の両方の特徴を持つ中分子医薬品の開発に挑む
  • 中外製薬と中外製薬工業の関係部門、
    社外の専門企業などを束ねてプロジェクトを推進
  • 最新の封じ込め技術、環境対応、洗浄機能などを実現
  • 世界的評価を受け、
    ISPE(国際製薬技術協会)の賞を受賞

中外製薬グループは低分子、抗体に続く新たなモダリティとして中分子医薬品の開発を進めています。
中分子医薬品は、低分子、抗体の両方の特徴を持ち、これまでにない治療を可能にすることが期待されています。

2022年、中外製薬工業(以下当社)はこの戦略を担う低・中分子合成原薬製造棟(通称FJ2)を藤枝工場内に新設、当社の開発から製造に至る幅広い技術力、プロジェクト推進力、チームワークが活きています。
現在、FJ2には中分子原薬、低分子原薬両方の製造設備があり、どちらにも対応した製造が可能で、2023年からGMP使用を開始しています。

FJ2建築プロジェクトは、中外製薬の研究開発部門、当社のMSAT(生産技術研究部)、DE(デジタルエンジニアリング部)、藤枝工場など、社内のさまざまな部門と、さらにエンジニアリング企業など、専門企業の協力、連携で進められました。
最新の封じ込め技術、環境対応、洗浄機能などを盛り込んだ高付加価値な医薬品の製造施設として、ISPE(国際製薬技術協会)の授与する賞のInnovation部門で年間最優秀施設賞を受賞しました。

FJ2建築プロジェクトの設計

GMP製造を保証する 製造と品質を確実に保証することで、医薬品製造を支える

社会の安心を築く製造・品質を
保証するために、
クオリフィケーションを計画、実行

クオリフィケーション
  • 医薬品製造にはGMPの遵守が不可欠
  • 施設/設備のクオリフィケーションは検証と文書化が必須
  • FJ2では、早期から入念に準備し、GMPに対応

医薬品製造と他の製造で大きく違う点として薬機法に基づくGMP(Good Manufacturing Practice)省令を遵守しなくてはならないことがあります。

医薬品は健康や生命に直接影響する製品の品質だけでなく製造においても管理基準が存在し、医薬品製造するための要件をまとめたものをGMPと呼んでいます。
医薬品の製造業者は、GMPを遵守して製造していることを証明し、文書化して残さなくてはなりません。新たな製造設備の立ち上げに際しては、その設備や製造工程が必要な性能を証明、文書化することをクオリフィケーションと言います。
FJ2は、新モダリティである中分子医薬品開発を含めた最先端の設備のため、プロジェクトの早い段階からその準備に入り、エビデンスを収集するためのクオリフィケーションなどを計画し、実行しました。

※: 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
クオリフィケーション達成のプロセス

世界最高レベルの封じ込めを実現 移動式アイソレータなど、最新の封じ込め技術で安全を追求する

世界最高レベルの
高薬理活性物質封じ込めが
リスクを低減、作業を効率化

最新の封じ込め技術
  • 高薬理活性物質の作業時の安全確保という課題の解決をめざす
  • 移動式アイソレータを採用した合成装置などの封じ込め技術で作業環境を安全に
  • 低分子原薬の製造室での気中粉体濃度は世界最高レベルを達成

FJ2では新しい技術をいくつも採用しています。それにより実現した画期的な例が世界最高レベルの封じ込めです。高薬理活性物質は危険度も高く、外に物質が漏れないようにすることはもちろん、防護服を着用しなくては作業ができません。
これまで、その取り扱いには、多大な時間と負担がかかっていました。

そこでFJ2では、中外製薬工業、中外製薬と戦略的提携関係にあるロシュ社、エンジニアリング企業がその技術とノウハウを結集して解決に当たりました。
エンジニアリング企業の協力のもと、移動式アイソレータの採用をはじめ、気圧や気流制御など、さまざまな封じ込め技術を導入。
低分子原薬の合成を行なう製造室では、気中粉体濃度の要求値「0.05µg/立方メートル以下」をはるかに下回る世界最高レベルの封じ込めを実現しました。

最新の封じ込め技術で安全を追求する

最新ノウハウを導入、洗浄しやすい設備に ロシュ社の協力を得て洗浄性能を高め、生産性を向上

ロシュ社から最新の知見を活用し、
高い洗浄性能を有する設備を導入、
設備の洗浄期間を短縮

高い洗浄性能
  • ロシュ社との議論の中で洗浄性能が注目される
  • 治験薬において製造スピードが競争力につながるため洗浄時間の短縮が大きな課題
  • ロシュ社の最新の知見を活用し洗浄期間短縮を実現

FJ2建築プロジェクトでは中外製薬と戦略的提携関係にあるロシュ社とディスカッションを重ねてきました。その中で、洗浄の重要性が焦点となりました。FJ2では治験薬製造棟であるため、同じ設備で異なる種類の原薬を製造します。
高薬理活性物質を次の製造に持越すことは許されないため、製造する原薬を切り替える際には、残留許容値以下まで十分に洗浄する必要があります。

従来の治験薬製造棟では洗浄完了までに数カ月を要していました。
FJ2ではこの問題を解決すべく、スイスに拠点を置くロシュ社の工場の視察や、ロシュ社SME(Subject Matter Expert)と設計図を基にした議論などを重ねました。
こうして洗浄性を高める機能を数多く導入し、結果として設備洗浄期間の短縮を実現しました。

開発から製造、運用、保守まで担う 製薬のプロフェッショナルとして開発支援を含めたあらゆる機能を発揮

研究開発に近い部分から
製造、設備運用、保守点検など、
医薬品製造を幅広く担当

設備運用、保守点検
  • 研究開発の後期から中外製薬と連携し、スケールアップを実現
  • 設備を稼働させ、安全・安定した運用をおこなう
  • IT化、自動化、環境対応などを実現、製造設備を進化させる

中外製薬工業(以下当社)は、中外製薬グループの中で、研究開発後期から製造、設備運用、保守点検など、医薬品製造に幅広く携わっています。

医薬品製造では、実験室規模で成功した製法を、生産規模に拡大する「スケールアップ」が欠かせません。そのため中外製薬の研究開発部門と密に連携し、当社の製造ノウハウや知識を活かし、段階的に製造規模を拡大していきます。

さらに実際の設備で試運転し、問題点などを解消して製造を軌道に乗せること、設備稼働後の点検、故障やトラブル対応なども当社の大切な役割です。
これらの業務なくして、新薬の開発も、それを患者さんのもとに届けることもできません。
さらにFJ2で自動化、IT化、環境に配慮した自然冷媒の利用など、最新のアイデアが具現化されています。将来に向け、設備の進化を担うのも当社です。
このように医薬品製造において、あらゆる面で頼れる企業であることが当社の価値となっています。

ISPE 2023年間優秀施設賞 受賞 世界の製薬技術を推進する業界団体から高い評価を得る

封じ込め技術、環境対応をはじめ
柔軟性の高い製造体制と設備が高い評価を受け、Innovation部門の年間最優秀施設賞を受賞しました。

1980年に米国で設立されたISPE(International Society for Pharmaceutical Engineering/国際製薬技術協会)は世界90カ国から2万人以上のヘルスケア製品の製造に関する関係者が参加する非営利団体です。

この団体が実施している賞FOYA(Facility of the Year Award)において、中外製薬グループの藤枝工場内に新設されたFJ2は、Innovation部門の年間最優秀施設賞を受賞しました。

高薬理活性物質を安全に扱うことのできる封じ込め技術、自然冷媒などによる環境への対応、安全性のほか、協力したエンジニアリング企業も含めたチームワーク、低分子医薬品と中分子医薬品両方の製造プロセスを同施設内に持ち、どちらも製造できる柔軟性などが高い評価を受けました。

2023 年間優秀施設賞 受賞 innovation部門 ISPE Facility of the Year Awards / ISPE:国際製薬技術教会(International Society for Pharmaceutial Engineering) / 藤枝工場 合成原薬製造棟 低・中分子医薬品 / 高薬理活性物質を安全に取り扱う世界最高レベルで革新的な製造施設であることが評価されました。

※紹介内容等は取材時(2023年12月)のものとなります。

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低・中分子医薬品の合成原薬製造棟 藤枝工場FJ2

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